2025年5月のFOMC会合後に行われたパウエルFRB議長の記者会見では、政策金利を据え置く決定とともに、経済の現状認識と今後の政策方針について幅広く語られました。以下、その要点を整理してお伝えします。
◆ 米経済は「堅調」だが、不確実性が高まる
パウエル議長は冒頭、「我々は最大雇用と物価安定の2つの使命に集中している」と改めて強調しました。経済は引き続き堅調で、失業率は4.2%と低水準、労働市場は完全雇用に近い状態が続いています。
一方で、関税政策などの外的要因がもたらす不確実性の高まりにも言及。「家計や企業の景況感が悪化しており、貿易政策への懸念が背景にある」としました。
◆ 政策金利は据え置き ~対応可能な構え~
今回のFOMCでは、政策金利を4.25~4.5%に据え置くことが決定されました。インフレと失業率のリスクが共に存在する中で、「現在の政策スタンスは状況に応じて柔軟に対応できる位置にある」との判断です。
昨年に比べて約100ベーシスポイント分の緩和が進んでおり、「やや引き締め的だが、中立寄りに近づいている」と評価されます。
◆ 経済指標と成長の見通し
GDPは昨年2.5%成長を記録しましたが、2025年Q1は若干減速。これは「関税引き上げ前の輸入急増」による貿易データの変動が原因とみられます。
ただし、実質的な国内需要(PDFP)は前年と同水準の3%成長を維持。消費は鈍化したものの、企業の設備・無形資産投資は回復傾向にあるとのことです。
◆ インフレは2%目標をやや上回る
インフレはピークから大幅に鈍化しているものの、依然として目標の2%をやや上回っています。
- PCE総合:前年比 +2.3%
- コアPCE:前年比 +2.6%
短期的なインフレ期待は上昇しており、関税がその要因とされています。ただし、長期的なインフレ期待は2%付近で安定していると分析されています。
◆ 関税がもたらすリスクと政策判断
パウエル議長は、政権が進める「貿易・移民・財政・規制政策の大幅変更」によって、経済影響の不透明感が一段と増していると警告しました。
関税が長期的なインフレ圧力につながるかどうかは、今後のデータ次第。
もしインフレが持続的に上昇し、成長が鈍化し、失業率が上昇すれば、FRBは難しい政策選択を迫られることになります。
◆ 経済データを重視した柔軟な対応
現在の方針として、「拙速な政策変更を避け、状況を慎重に見極める」との姿勢が明確にされました。データに基づいて柔軟に対応するという基本方針は変わっていません。
一部では利下げ観測もありますが、「今は急ぐ段階ではない」とパウエル議長は明言しています。
◆ 金融政策フレームワークの見直し進行中
会見では5年に一度の金融政策の枠組み見直しが進行中であることも明かされました。インフレへの対応や、政策目標達成のための手段について議論が続けられており、夏までに結論を出す予定です。
◆ まとめ:FRBは「慎重かつ柔軟に」関税不透明感に備える
今回の会見でパウエル議長は、関税という外的ショックへの警戒感を示しつつも、経済の基調は依然として健全であるとの見方を維持しました。
FRBは物価安定と最大雇用の使命のもと、「急がず、しかし備える」という方針で今後の政策判断に臨む構えです。
💬 今後の注目ポイント
- 関税政策の動向と物価・雇用への影響
- インフレ期待の変化
- Q2以降の成長率と消費動向
- 利下げのタイミングとその根拠となる経済指標

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