今回は、アメリカ財務省が2025年2月に発表した「2024年度財務報告書」の要点を解説します。この報告書は、米国政府の財政状況を明らかにし、市民に現行の財政政策の持続可能性について理解を促す重要なドキュメントです。
📉現在の財政は「持続不可能」
財務報告書の最大のメッセージは明確です。
「現在の米国財政は長期的には持続不可能である」
その根拠として、政府債務とGDPの比率(債務対GDP比)が挙げられています。2024年度末時点で、この比率は**約98%**に達しており、今後も上昇が続く見込みです。
📊将来の見通し:債務対GDP比が500%超?
報告書では、今後75年間の財政予測が示されています。その中では、現行政策が継続された場合、2099年には債務対GDP比が535%に達するとされています。つまり、アメリカの経済規模の5倍以上の国債を抱えることになるという衝撃の予測です。
この原因は主に以下の2点です:
- 高齢化による社会保障費・医療費の増加
- 慢性的なプライマリーディフィシット(利払いを除いた歳出超過)
💸プライマリーバランスの動向
- 2024年度のプライマリーディフィシット(利子を除いた歳出と歳入の差)はGDP比3.3%
- 今後10年間の平均は3.1%
- 高齢化による医療・年金支出増で2045年には最大4.0%に達する見込み
- 2099年時点でも依然として2.8%の赤字が残ると予測
🧓社会保障とメディケアの信託基金
信託基金の枯渇時期とその後の給付水準の見通しは以下の通りです:
プログラム | 信託基金枯渇年 | 枯渇後の給付水準 |
---|---|---|
メディケア(病院保険) | 2036年 | 2036年時点で89%、2048年で87%、2098年に100%回復予定 |
社会保障(老齢・遺族・障害年金) | 2035年 | 2035年で83%、2098年には73%に低下 |
※報告書では、枯渇後も満額給付が継続されると仮定しており、現行法とは異なる前提です。
🕰️財政改革のタイミングが重要
報告書では、財政改革を**「いつ行うか」**によって、将来世代への負担が大きく変わると強調されています。
改革の開始時期 | 必要なGDP比黒字幅(平均) |
---|---|
2025年 | 4.3% |
2035年 | 5.1%(+0.8pt) |
2045年 | 6.3%(+2.0pt) |
つまり、改革が遅れるほど後世に重い負担がのしかかるということです。
🌍気候変動対策にも注力
バイデン政権は、クリーンエネルギーへの投資と雇用創出を進めており、これまでに4500億ドル以上の民間投資が発表され、33万人超のクリーンエネルギー雇用が誕生したと報告されています。今後の製造業は「持続可能性」も鍵となりそうです。
📝まとめ
- 米国の財政政策は現状のままでは持続不可能
- 債務比率は今後も上昇、2099年にはGDPの5倍超の債務に
- 社会保障・医療制度は信託基金の枯渇が迫る
- 改革を早く行うほど、将来世代の負担が軽くなる
- 気候変動対策と経済政策の両立が今後の課題
アメリカの財政は「時間との戦い」です。将来の世代にどれだけの選択肢と余裕を残せるか――それは今の政策判断にかかっています。

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